日本の漫画業界が数々のトップ作品を輩出し、世界に認められてきた背景にあるのは、同人活動、書店での販促活動、翻訳、電子プラットフォーム等、漫画に携わる人々による巨大なエコシステムの存在です。このエコシステムの層の厚さと裾野の広がりこそが、日本の漫画の強さの源泉なのです。
Culture Weaverは、業界全体の成長に向けた一翼を担うべく、全ての層に対する国際化支援を目指してあらゆる関係機関との連携を推進しています。
日本のエコシステムの広がりを示す一例として、国内の漫画家育成と、海外へのノウハウ展開の事例をご紹介致します。
漫画家育成で挑む地方創生
2023年4月、熊本県立高森高等学校で日本の公立高校で初となる「マンガ学科」が新設されたニュースは記憶に新しく、業界内でも驚きと喜びをもって迎えられました。過疎化が深刻な地域で廃校寸前だった高森高校に「マンガ学科」が設立されたことで、「漫画を学びたい」と全国から高森町に生徒が集ったのです。
設立にあたっては高森町、出版社、県教育委員会、高森高校の4者間協定が締結され、町には学生寮が整備される等、地域の活性化にも繋がっていきました。
高森高校の「マンガ学科」設立は、自治体と官民連携が一丸となって取り組んだ象徴的な事例であり、漫画の特に若い世代に対する訴求力、ポテンシャルの高さを表しています。同科で学ぶ学生の中から1人でも世界レベルの漫画家が輩出され、高森町で漫画家を描き続けることができれば、その経済的恩恵は地域と漫画家を目指す若者達に還元されていくはずです。漫画の力は、地方創生の文脈でも大いに活用できる可能性を秘めています。
人材発掘のために自ら国境を越える
大阪総合デザイン専門学校は、多くの職業漫画家を生み出しているトップ校のひとつです。漫画業界に限らず、今や日本のどの学校でも、学生数を確保するために留学生のリクルーティングが欠かせません。大阪総合デザイン専門学校は、留学エージェントに頼るだけでなく、職員自ら直接現地に赴き、各国の学校と直接コミュニケーションを取りながら、未来の漫画家となる学生の発掘に尽力されています。
世界には、日本で漫画を学びたい若者が数多くいることでしょう。しかし、その中で「プロの漫画家になる」ことを目指し、努力し続けることができる人材はどれくらいいるのでしょうか。大阪総合デザイン専門学校が重視するのは、学生の能力だけでなく「本気度」と「覚悟」です。現地での積極的なリクルーティング、そして日本での連載環境に適した人材の輩出を目指した独自カリキュラムが、優れた漫画家育成に繋がっているのです。
未来の漫画家が挑む、イラスト・漫画コンテスト
未来の漫画家育成の起爆剤ともなっているのが、大阪総合デザイン専門学校が主催する国内外でのコンテストです。Culture Weaverは、台湾で行われる「台日學生原創插畫漫畫大賽(台日学生オリジナルイラスト・漫画コンテスト)」の運営に携わっています。
台湾在住の大学生を対象としたイラスト部門と漫画部門、高校生を対象としたイラスト部門と漫画部門という4つの部門から構成される本コンテストでは、1000通以上の応募作品の中から部門毎に最優秀賞作品が選出されます。最優秀作品賞受賞者は大阪総合デザイン専門学校への短期留学の権利が与えられ、実際に漫画やイラストの授業を受講することが可能です。
表彰式及び作品展示会では、日本と台湾間の文化交流やコミュニケーションの場として活用頂くための工夫を凝らしています。2024年3月に開催した第4回目の表彰式では、アーティストによるライブドローイングや、台湾作家と日本編集者の対談を通じて、参加者に二国間の漫画文化の違いに触れて頂きました。また、表彰式後には日本への留学を望む学生達に向けたセミナー及び個別相談会を設け、台湾の学生をサポートしています。
「第4回台日学生オリジナルイラスト・漫画コンテスト」表彰式及び作品展示会の様子はこちらのVlogからご覧頂けます。https://youtu.be/BxAg82VLwdA?si=SYp6eH2wL8DQZRLX
日本の漫画教育が国外に与える影響
台湾では既に多くのハイレベルな作品が多く生まれている一方で、大阪総合デザイン専門学校のように体系的な漫画教育のノウハウの蓄積には至っていないのが現状です。その背景には、まだ発展途上にある台湾の漫画産業において職業漫画家の地位が日本のようには確立されておらず、漫画家育成のための教育価値が見出されていないといった実情があります。
今回ご紹介した事例のように、日本のノウハウを共有して海外の漫画産業の活性化に貢献することは、教育を含む日本の漫画エコシステムの価値向上と、世界の漫画業界全体の活性化に繋がるでしょう。
台日学生オリジナルイラスト・漫画コンテストは、今後地域や参加校を拡大して運営していく方針です。漫画教育関係者の方はもちろんのこと、漫画出版に関わる多くの方に人材発掘、文化交流のプラットフォームとして活用頂ければ幸いです。
台湾の漫画業界関係者へ向けたメッセージ
Culture Weaverは、台湾と日本における漫画交流の一端を担ってきたという自負と、今後も両国の懸け橋として役割を果たしていく覚悟を持っています。
これまで台湾の漫画業界に携わる関係者の皆様とご一緒する中で、ビジネス価値を生み出す作品として昇華できていないという編集者、出版社の方の歯がゆい想いを、我がことのように感じてきました。
国内だけで解決に至らない課題があれば、是非日本を含む外部の力を活用頂き、共に漫画業界の発展に貢献していけることを願っています。漫画業界で共に未来を創っていく近隣の友人として、Culture Weaverは今後も日本と台湾の懸け橋として貢献してまいります。