日本の漫画が世界中で人気を博す中で深刻化しているのが、外国語に翻訳された海賊版コミックスによる経済的損失です。映像業界団体「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」の調査によると、2022年のオンラインで流通する日本コンテンツの海賊版の被害額は約2兆円にのぼり、その内出版の被害額は約8,000億円であると試算されています。
取り締まりだけではない、海賊版対策
海賊版対策のためには、取り締まりの他に、海賊版の代わりとなる正規版を迅速に利便性の高い方法で展開することが求められます。フランスのオンライン漫画プラットフォーム Mangas.ioは、フランス市場の大手漫画出版社と提携し、多種多様な漫画作品(正規電子版)をサブスクリプションモデルで提供しています。
サブスクリプションモデルの必要性
多くの日本の出版社にとって、サブスクリプションモデルは漫画の安売りに繋がる懸念材料として捉えられていました。しかし、無断翻訳された海賊版が溢れる海外市場において、海賊版サイトを完全に取り締まることはもはや不可能でしょう。何の施策もないまま闇雲に海賊版サイトを閉鎖しても、また次の海賊版サイトが現れるでしょうし、アクセスルートを絶たれた読者は漫画を読む場を失ってしまうのです。
「無料の海賊版でしか漫画を読んでこなかった」という読者に対し、「お金を払って正規の漫画を読む」という習慣づけをする意味でも、海外でのサブスクリプションモデルの導入は現実的であると言えます。
正規版流通の促進と海賊版対策という両輪をバランスよく回すためには、Mangas.ioのようなサブスクリプションモデルを導入した、オンラインプラットフォームが必要不可欠なのです。
Mangas.ioと日本企業間で起きていたミスコミュニケーション
当初、Mangas.ioのスタッフは、フランスから日本へ足を運び、日本の様々な漫画出版社や関係機関を訪問しながらフランス語による海賊版コミックスの深刻さを伝え、その解決策のひとつとしてMangas.ioの可能性を訴えてきました。しかし、ここでもビジネス文化の違いやコミュニケーションの掛け違いから、Mangas.ioと日本の出版社との間で、双方が考える課題や、とるべきアプローチの方法が共有できないという状況に陥っていたのです。
Mangas.ioの取り組みやサブスクリプションモデル導入の意義は、日本の出版業界でも理解が広がっていきましたが、うまく意思疎通ができないがために、Mangas.io側で日本の出版社側の懸念を理解することができず、具体的な協働の提案に至らないケースが散見されました。
Culture Weaverによる支援とMangas.ioの認知度の高まり
上記の状況を受け、日本・フランス双方にネットワークを有するCulture Weaverが日本の窓口となり、Mangas.ioが日本側の問題意識やニーズを的確に把握できるようコミュニケーション支援を実施しています。
Mangas.ioの認知度の高まりと共に、日本の漫画出版社からサービスへの好評や感謝のお言葉を頂くことも増え、時代のニーズに即したサービスとして評価を頂いています。既に多くの日本の出版社が、作品提供元としてMangas.ioのプラットフォームへ参画下さっていることは、日本の出版社の意識や業界全体の流れに大きな変化が生まれている証左であると感じます。
Culture Weaverでは、Mangas.ioと出版社、金融機関、政府機関など、各関係先とのコミュニケーション支援と併せて、Mangas.ioの日本における資金調達やオフィス設立のサポートといったコンサルテーションも行っています。
正規作品のさらなる普及に向けて
Mangas.ioは、今後さらに多くの作品を配信ラインナップに追加することを予定しており、日本の出版社との協業がより一層求められます。信頼できるプラットフォームによる正規電子版作品の普及は、海賊版の氾濫という深刻な課題を解決に導き、漫画業界の健全な成長に貢献する施策です。
Culture Weaverは日本側のニーズや懸念を丁寧に汲み取り、Mangas.ioをより魅力的なプラットフォームへと成長させるべく尽力してまいります。