漫画出版社の海外展開に関して(2/4)

3. 海外展開における最も積極的なアプローチ

最も積極的な海外展開のアプローチは、直接的な現地市場への参入を伴います。これには、企業合併や買収(M&A)を通じて、海外の市場に現地法人を設立し、その運営を自ら手がけることが含まれます。この手法は、出版社が海外市場で直接的な存在感を確立し、現地のニーズや市場の動向に迅速に対応できる機会を提供します。また、現地の文化や市場に精通したチームを構築することで、地域に根差したマーケティング戦略を展開することが可能になります。

しかし、この方法は高い資本力とリスク管理能力を必要とします。多くの出版社にとって、海外での現地法人設立は大きな投資とリスクを伴うため、慎重な検討が必要です。海外市場への直接参入によって、現地の出版社たちとは、これまでの許諾元・許諾先の関係から、同じ商圏で競い合うライバル関係に変化しますので、かつての味方と戦っていく覚悟が求められます。そのほか、資金調達、市場分析、現地法規の理解など、多岐にわたる課題が存在します。

この積極的なアプローチの裏側には、出版社が直面する挑戦と機会が潜んでいます。次の章では、消極的なアプローチと積極的なアプローチの間に存在する、実現可能な選択肢とその利点に焦点を当てていきます。出版社が実際にどのような戦略を適用できるのか、そしてそれがもたらす可能性について、具体的な例を交えながら掘り下げてみましょう。

4. 実現可能な海外展開の選択肢

漫画出版社の海外展開において、ただ待っているだけの「消極的アプローチ」と現地法人を設立する「積極的アプローチ」の間に、多くの出版社にとって実現可能で効果的な選択肢がいくつも存在します。私がアドバイザーを務める際には、クライアントが得意とする作品ジャンルを世界各地の市場ニーズに照らして、各言語ごとに丁寧に検討しながら、それぞれの展開方針を議論し、アクションプランに落とし込んでいきます。

このような現実的な選択肢の中から、次の章では、自社全作品のライセンスを海外出版社に提供するといった「パートナー契約」について考えます。